こんにちは、和太郎です。
日々、快適なゲーム環境を求めて色々なデバイスを調査しているわけですが、個人的に感じている事があります。
無線のゲーミングイヤホンって選択肢少なくない??
無線のイヤホンでゲームしたいんだが??
僕はイヤホン派で、ヘッドバンドタイプを避けたいのですが、調べてみても2021/05/05現在、ヘッドバンド型が主流で選択肢が少ないです…
一般的な音楽用途の無線イヤホンは多くありますが、基本的にBluetooth 接続となっています。
Bluetooth って何だか音が遅延するイメージがあって、ゲームの為に買うのはちょっと気が引けますよね。
今回は、実際Bluetooth 接続の遅延ってどのくらいあるのか?ゲームに何とか使えないのか?を調査・検証してみました。
僕と同じ様に、Bluetooth 接続のデバイスを検討しているものの音の遅延(レイテンシー)が心配で購入を迷っている方向けに、
- 学生の頃から楽器やオーディオ機器を買い漁り
- PCでFPSを10年以上、1万時間以上遊び倒し
- エンジニアとして日々様々な機械を作ったり使ったりしている
そんな僕の知識・経験からわかりやすく調査・検証結果をお伝えしていきたいと思います!
遅延が起きるしくみ
まず初めに、なぜ音の遅延(=レイテンシー)が発生するのか、その仕組みをざっくり整理します。
今回はPC環境を例に挙げますが、スマホやプレステ、Switch等でも同じ考え方で良いと思います。
有線の場合
有線環境でゲームをしている場合、下の絵の様な流れで音が再生される事になります。
例えばFPSをプレイしていて、クリックで銃を撃つ動作をするとすると、
- ①マウスをクリック(銃の発射)する
- ②マウスの信号がPCに伝わる
- ③ゲームの中から音のデータ(銃の発射音)が出力される
- ④音のデータがサウンドデバイスに伝わる
- ⑤サウンドデバイスからデータに合わせた信号を出力
- ⑥ヘッドセットから音が出る
というような流れで音が再生されます。
厳密に言うと色々省略してますが、ざっくりこんなイメージです。
この時に、主な音の遅延の原因となるのは、
④の音のデータが伝わる箇所と、⑤のサウンドデバイスが音を再生する箇所が遅延の原因となります。
但し、これらが無いと音を再生する事は出来ないため、必要最小限と言えるでしょう。
無線の場合
無線の場合はと言うと、有線の際のデータの伝送が無線になる事で要素が増えます。
同様に、FPSをプレイしていて、クリックで銃を撃つ動作を例に説明すると
- ①マウスをクリック(銃の発射)する
- ②マウスの信号がPCに伝わる
- ③ゲームの中から音のデータ(銃の発射音)が出力される
- ④音のデータを電波で送る
- ⑤電波を受け取り、音のデータ(銃の発射音)に戻す
- ⑥サウンドデバイスからデータに合わせた信号を出力
- ⑦ヘッドセットから音が出る
この時に、主な音の遅延の原因となるのは、
④、⑤、⑥で、特に④、⑤が有線と比較し、電波でデータの通信を行う為の追加の処理が発生し、大きな遅延の要素となっています。
2.4G[Hz](独自無線)とBluetooth の違い
よくゲーミングデバイスでは”2.4G[Hz]帯の独自の低遅延無線”で通信を行っていると紹介されている事があると思います。
一方、音楽を聴く用途ではBluetooth による無線通信を行っていると紹介されている事が多いと思います。
この二つの大きな違いは、先ほど無線通信の仕組みで説明した、④の電波をデータで送る箇所と、⑤の電波を受け取る際の処理が異なります。
ざっくり違いを表にまとめると下の様になります。
Bluetooth | 2.4G[Hz]独自無線 | |
通信するデータ | プロファイル により様々 | 機器に必要なデータのみ |
音の遅延量 | コーデック に依る | 一般的に早い |
対応機器 | BT対応なら接続できる | 専用のUSBドングルとしか通信できない |
Bluetooth の説明でなんだか意味のわからない単語が出てきましたね。
詳細は次節で解説していきます。
2.4G[Hz]独自無線は、音データの通信以外の余計な処理を除外するなどして、Bluetooth と比較して通信の速度を上げやすく、一般的に2.4G[Hz]の独自通信の方が遅延が少ないと言われています。
Bluetoothのプロファイル ? コーデック ?
Bluetooth 対応機器の商品の紹介ではよく、プロファイル や コーデック と言った単語が出てくると思います。
まず、プロファイル とは何か?と言うと、どんな種類のデータ通信に対応しているかを表すものになります。
Bluetooth は音だけでなく、例えばマウスやキーボードの操作情報など、色々な機器を無線化する為に使われます。各機器毎に通信したいデータが異なる為、”プロファイル”というルールを決めておき、どのプロファイル に対応しているかを仕様に記載する事で、どんな用途に使えるかを区別しています。
関係ありそうなプロファイル を簡単に紹介すると、下記のような物があります。
プロファイル名 | 通信内容 |
A2DP | 音のステレオデータ(右と左のデータ)の送信 |
AVRCP | 音量の上げ下げ等の操作 |
HSP | 通話に用いる音声の入出力データ |
HFP | 電話の発着信や、通話に用いる音声の入出力データ |
HID | キーボードやマウスの操作データ |
他にもたくさんあります。興味がある方は下記など見てみてください。
続いて”コーデック”とは何か?と言うと、音のデータを送る際に、効率よく電波で送る為の技術や仕様の種類を表しています。
コーデック はBluetooth の登場から、色々な進化があり、現状複数の技術が覇権争いをしているような状況です。コーデック は音質や遅延量に大きな差があるため、この点はしっかり確認するようにしましょう。
コーデックの種類は下記が代表的です。
コーデック名 | 特徴 |
SBC | Bluetoothで音のデータ通信に必須のコーデック。遅延が大きい。 |
ACC | 主にApple製品でよく使われている。SBCより遅延が小さい |
AptX | 主にAndroid製品でよく使われている。SBCより遅延が小さい |
AptX HD | AptXをさらに高音質にしたもの |
AptX LL(LowLetency) | AptXと音質は同等のまま、さらに低遅延にしたもの。現在最も低遅延 |
LDAC | 現在最もデータ量多く通信でき高音質と言われているもの |
今回一番重要なキーワードは AptX LLです。
無線イヤホンでゲームを楽しむ為には、現状最も低遅延と言われているこのAptX LLの遅延量がどのくらいなのか?ゲームプレイに耐えうるのか?が鍵となります。
次節からは、これらを踏まえて検証をしていきます。
遅延の実測検証
それでは遅延が実際どのくらいあるのか?ゲームプレイに問題無い範囲なのか?を検証していきます。
有線、Bluetooth、2.4G[Hz]独自無線、それぞれの遅延量が具体的にどのくらいか具体的な数値で比較できるのが一番わかりやすいかと思いますので、なんとか測定を試みます。
検証方法
今回は”音声フィードバックテスト”と言われる測定方法で”ラウンドトリップレイテンシ”を測定しました。
難しくなるので細かい説明を省きますが、興味がある方は下記を見てみてください。
ざっくり測定方法を説明すると、下の絵の様な環境で測定を行います。
ヘッドセット等から再生される音を直ぐに録音する事で、PCから送信した音がまたPCに戻ってくるまでの時間を測定します。下の絵のようなデータが取れます。
往復の時間になっているので、これを半分にして、おおよそ再生の遅延とみなします。
また、PCの負荷状況などで遅延はばらつくため、5回測定した平均を結果とします。
検証機器
今回の検証では、有線、無線の比較。無線の中でもBluetoothのコーデック違いや、2.4G[Hz]独自無線の比較をする為に、色々な対応機器を用意しました。
下の表が機器一覧です。
機器 | 接続方式 |
デスクトップPC直挿し | 有線 |
Logicool G733 | 2.4G[Hz] 独自無線(=lightspeed) |
Creative BT-W3 + Sennheiser momentum free | Bluetooth SBC |
Creative BT-W3 + Sennheiser momentum free | Bluetooth aptX |
Creative BT-W3 + Sennheiser momentum free | Bluetooth aptX LL |
有線機器
デスクトップPCにUSB接続のオーディオインターフェースを接続し、出力端子と入力端子を有線で接続して測定しました。
これで音の伝搬も無視した、最速の往復の遅延を測定できます。
また、この後の無線接続機器の録音でMic+オーディオインターフェースを使うため、条件を揃えるためにこの環境としています。
2.4G[Hz]独自無線 (Logicool lightspeed)
2.4G[Hz]独自無線の機器として、Logicool G733を測定してみました。
G733はLogicool独自のLIGHTSPEEDという高速な無線通信をしているとの事です。
公式の商品紹介は下記です。
商品が気になった方は下記からどうぞ!
測定時には下の写真の様に再生はG733から再生し、録音は有線のMicを使っています。
これは、この後のBluetooth接続時にはワイヤレスイヤホンのマイクは使用できないため、測定条件を揃えるための処置です。
Bluetooth (SBC/AptX/AptXLL)
Bluetooth機器として、送信機にCreative BT-W3を、受信機にSennheiser momentum free を使用しました。
Creative BT-W3はUSB接続した機器のオーディオ出力をBluetoothで送信する事ができるUSBドングルで、Bluetoothに元々対応していないPCでもBluetoothで音を送れるようになります。
コーデックはSBC/AptX/AptXHD/AptXLLに対応しています。
公式の製品情報は下記です。
受信機にはSennheiser momentum free は音楽用途のワイヤレスイヤホンですが、SBC/AptX/AptXLLと幅広いコーデックに対応しています。
公式の製品情報は下記です。
どちらもAptXLLを用いた低遅延の無線通信に期待し購入した商品です。
とてもおすすめなのでそれぞれ別記事で個別に詳細を紹介したいと思います。
商品が気になった方は下記からどうぞ!
Bluetoothの通信では、HSPやHFPのプロファイルが選択されていないとMicの入力データを送る事ができません。一方、ゲームプレイ時に使用する音のステレオ再生は、プロファイルはA2DPを選ぶ必要があり、イヤホンに搭載されているMicを使う事はできません。
よって、測定時には下の写真の様に、録音は有線のMicを使用します。
検証結果
結果は下の表のとおりです。
接続方式 | 遅延[ms] |
有線 | 31.4 |
2.4G[Hz] 独自無線(=lightspeed) | 31.8 |
Bluetooth SBC | 148.9 |
Bluetooth aptX | 133.8 |
Bluetooth aptX LL | 48.9 |
なんと、2.4G[Hz]独自無線は、ほぼ有線と同等という結果となっています。
一方、Bluetoothは古くからあるSBCは有線と比較して、110[ms]も遅延が多いです。110[ms]と言うと、0.1秒とちょっとです。なかなかの差ですね…
そして期待のAptXLLは48.9[ms]と、有線・2.4G[Hz]独自無線に対して17[ms]程遅延が多いという結果となりました。
個人的な印象としては、かなり健闘していると感じています!
どのくらいの遅延までゲームプレイに影響ないのか?
代表的な各方式の遅延量はわかりましたが、実際ゲームプレイに影響を与えない遅延量はどのくらいなのでしょうか?
下記の日本音響学会のQAを参考にすると、人間が映像と音のずれを知覚(気づく)事ができるのは、音の遅れでは125[ms]との事です。意外と耐えますね…
これをみると、BluetoothのSBCやAptXはかなりギリギリです。人によっては気づくレベルでしょう。
別な視点で考えてみましょう。
普段ゲームプレイ時に使用しているモニターのリフレッシュレートは30~240[fps]といった数字の物がほとんどかと思います。
このfpsという単位は、frame pre seconds の略で一秒間に何回映像が切り替わるかを示すものです。
この値が大きいほど1秒間に映像を更新する頻度が増え、より滑らかな映像に感じます。
例えば60[fps]を例に、映像が切り替わるのに何秒かかるか計算すると、
1秒÷60回=0.016[秒]=16[ms]です。
これを元に、音の遅延を映像の切り替わる回数で表してみると、例えば有線の31.4[ms]の遅延なら、
31.4[ms] ÷ 16[ms] = 1.9
と、映像が二回切り替わる間に音が再生される事がわかります。
この映像の切り替わる頻度と音の遅延量を比較してみると、下の表の様になります。
接続方式 | 遅延[ms] | 30[fps] | 60[fps] | 144[fps] | 240[fps] |
有線 | 31.4 | 0.9 | 1.9 | 4.5 | 7.5 |
2.4G[Hz] 独自無線(=lightspeed) | 31.8 | 0.9 | 1.9 | 4.5 | 7.6 |
Bluetooth SBC | 148.9 | 4.4 | 8.9 | 21.4 | 35.7 |
Bluetooth aptX | 133.8 | 4.0 | 8.0 | 19.2 | 32.1 |
Bluetooth aptX LL | 48.9 | 1.4 | 2.9 | 7.0 | 11.7 |
この数字を見たときに、60[fps]で比較すると、有線で遅延を感じずにゲームをプレイできていた人が、AptX LLにするともう一枚映像が変わる分遅れて音が届く遅延の増加が気になるか?という事になりますが…そのくらい気にならないのでは?という気がします。
実際FPSをプレイしてみてどのように感じたかというと、AptXLL以下の遅延であれば、ゲームプレイにはまったく違和感を感じずにプレイできました!
一方で、SBC等の一般的なBluetoothでは若干音と絵のずれを感じます。
単に映像と音を見るだけの場合と、自分で操作しながら映像と音を聞くのでは人間の感じ方に差があるのかもしれませんね。
また、みなさんご存じの通りプレイするゲームによっても遅延をどのように感じるかは変化すると思います。
皆さんの動体視力でも変わりそうです。
僕はもうおっさんなので、この記事を読んでくれてる皆さんより遅延が気づきにくくなっている可能性を否定できない…
この違いをどのように皆さんに伝えられるかは今後の課題ですね…
結論
各接続方式毎に遅延を測定し、いくつかの視点で分析してきましたが、僕の感じ方も含めて下記のように今回は結論づけたいと思います。
- 2.4G[Hz]独自無線は有線とほぼ変わらず、どんなゲームでも楽しめる!
- Bluetoothでも、コーデックがAptXLLなら若干遅延が増えるものの、ほとんどの人は遅延を感じずにゲームを楽しめる!
- AptXLL以外のBluetoothは遅延を感じてしまう可能性があるので要注意
動体視力によっぽど自信のある人や、このわずかな差でもなくして、少しでも最高のゲーム環境でゲームプレイしたいという人以外は、AptXLL対応機器であれば、Bluetoothでも快適にゲームプレイできると思います!
最後にaptXLL対応の機器をいくつか紹介するので、気になった方は是非チェック!購入してみてください!
送信機
今回使用した送信機はこちら。これで色んなデバイスを無線で楽しめるようになる神デバイスです!
こちらで商品レビューもしているので気になった方は是非チェックしてみてください。
受信機
今回僕が使用したものはこちら。音質もよくオススメです!
ちょっと高いなって方は、廉価のこちらも良さそうです。
まずはaptXLLをもっと安く体験してみたいなって人はこれとかどうでしょう?aptXLL対応機器としてはかなりリーズナブルです。
ゲーマーから評判の高いSHUREのSE215のワイヤレス版もaptXLL対応のようです。
気になるデバイスを購入して、是非快適なゲームライフを楽しんでください!!!
それではまた!
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